- 倒産・廃業が急増:2026年1〜8月の倒産・廃業は144件発生し、年間で8年ぶりに200件を超える勢い。
- 10年で1700社超が消滅:経営難や後継者不足により、過去10年で1,700社以上の運営事業者が市場から退出。
- 高まる赤字割合:地方では4社に1社が赤字。首都圏でも2割超が赤字に陥るなど都市部でも深刻化。
- 複合的な経営悪化要因:HV・EVの普及や人口減少に加え、低利益率、人件費・設備費の高騰、スタッフ不足が直撃。
- 行政の支援策:経済産業省が過疎地等のSSを集中支援する仕組みを模索中。
ガソリンスタンドの倒産・廃業が5年連続で増加
2026年1〜8月におけるガソリンスタンド(SS)運営事業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は19件、休廃業・解散は125件にのぼり、合計144件に達しました。これは前年同期(計132件)を約1割上回り、1〜8月期としては過去10年で最も多いペースです。
年間ベースでも5年連続で増加する見通しとなっており、2018年以来8年ぶりに年間200件を超える可能性が高まっています。過去10年間の累計では、すでに1,700社を超えるSS事業者が市場から退出する事態となっています。
なぜガソリンスタンドが消えていくのか?経営悪化の背景
ガソリンスタンドの経営環境がここまで厳しくなっている背景には、単なるガソリン需要の減少にとどまらない、構造的な問題が存在します。
ガソリン1Lあたりの利益は数円程度
ガソリン価格が高騰しているため一見すると売上高は維持できているように見えますが、セルフ式や大手チェーンとの価格競争により、燃料販売そのものの利益率は「1Lあたり数円」と極めて低いのが実情です。
そのため本来は洗車、車検、板金整備、レンタカーなどの「油外収益」で稼ぐ必要がありますが、人口減少が進む地方ではそうした需要自体が乏しく、設備維持費や人件費などの固定費を賄いきれなくなっています。
クルマの「電動化」と整備士不足のダブルパンチ
ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及に伴い、車1台あたりの燃料消費量は確実に減少しています。さらに地方での軽EVの浸透や、整備士をはじめとする現場スタッフ不足が追い打ちをかけています。
地域ごとの損益状況と赤字割合
ガソリンスタンドの赤字状況を地域別に見ると、地方だけでなく都市部においても深刻な課題を抱えていることが分かります。
| 地域 | 赤字企業の割合 | 主な要因・特徴 |
|---|---|---|
| 地方 | 約25%(4社に1社) | 人口減少・高齢化による需要縮小、車検や整備などの油外収益の伸び悩み。 |
| 首都圏 | 2割超 | 地価・人件費の高騰、量販店や大手との熾烈な価格競争、若者の車離れ・EV普及。 |
| 京阪神・中京圏 | 相対的に低い | 赤字割合は抑えられているものの、燃料需要の構造的減少という課題は共通。 |
「地域最後の給油所」が消えることによる生活への不利益
ガソリンスタンドは単に自家用車へ給油する場所にとどまらず、地域の重要な暮らしのインフラ機能を担っています。店舗の閉鎖が進むことで、以下のような生活への重大な懸念が生じています。
・給油難民の発生:近隣にSSがなくなり、給油のために往復数千キロや数十分かけて移動が必要になる。
・灯油配送の停止:高齢化が進む地域で、冬季の暖房用灯油の配達が受けられなくなるリスク。
・災害時の給油拠点消失:停電や災害時に緊急車両や自家用車へ燃料を供給できるインフラが失われる。
今後の見通しと行政による支援策
こうした事態を受け、経済産業省は過疎地などガソリンスタンドの維持が困難な地域を対象に、特定の店舗を選定して集中支援する仕組みの導入を模索するなど、インフラ維持に向けた動きを強めています。
しかし、クルマの電動化の波や人手不足といった構造的課題を前に、一筋縄ではいかないのが現状です。各事業者が持続可能な収益モデルを再構築できるかが今後の大きな焦点となります。
よくある質問(FAQ)
まとめ
薄利多売の構造やHV・EVの普及、人口減少に加え、人件費高騰やスタッフ不足が追い打ちをかけています。地域の生活や防災を支える拠点をいかに維持していくか、国や自治体を巻き込んだ持続可能な仕組みづくりが急務となっています。
過疎化や電動化という大きな時代の変化に伴い、街の「灯り」が一つずつ消えていく現実は、私たちの社会全体のあり方に問いを投げかけています。
効率性だけでなく、誰もが安心して暮らし続けられる地域インフラをどう守るのか、今こそ地域社会全体で真剣に向き合うべき時を迎えています。

