近年、日本国内で「上場廃止」を選択する企業が急増しています。2025年には東証での上場廃止数が100社を超え、過去最多を記録しました。かつては「上場=一流企業の証」とされてきましたが、今やあえて非上場化する動きが加速しています。
不祥事や経営不振ではないのに、なぜ日本企業は市場を去るのでしょうか。背景には、投資ファンドによる買収リスクや、株主からの厳しいプレッシャー、そして若者の就職観の変化があります。「上場企業だから安心」という常識が崩れつつある今、なぜ改善されないのでしょうか。あなたも、自分の勤め先や投資先が突然「上場廃止」を発表したら……と不安に思ったことはありませんか?
1. ニュース概要(何が起きたか)
東京証券取引所において、上場を廃止する企業が異例のペースで増えています。2025年の実績では、東証プライムの約2.8%、スタンダードの約3.8%、グロースの約3.4%にあたる企業が市場から退場しました。
特筆すべきは、その理由の多くが「倒産」といったネガティブなものではなく、TOB(株式公開買付け)やMBO(経営陣による自社買収)による前向きな、あるいは戦略的な非上場化である点です。企業は多額のコストをかけてまで維持してきた「上場」というステータスを、自らの意志で手放し始めています。
2. 発生した背景・社会的要因
なぜ今、これほどまでに上場廃止が相次いでいるのでしょうか。主な要因は「上場のメリット」と「維持コスト・リスク」の逆転にあります。
- アクティビスト(物言う株主)の台頭: 投資ファンドなどが株を買い増し、経営に強く介入するケースが増えています。
- 短期的な利益追求への圧力: 四半期ごとの決算公開や配当性向の向上を求められ、長期的な投資がしにくくなっています。
- 情報開示の負担: IR活動や監査法人への支払いなど、上場を維持するための金銭的・時間的コストが増大しています。
かつて上場の最大の目的だった「資金調達」も、現在は銀行融資やベンチャーキャピタルが充実したことで、必ずしも証券市場に頼る必要がなくなっているのです。
3. 影響を受けた生活者・地域の声
企業が上場廃止になると、その企業に勤める従業員や取引先、そして地域社会にも波紋が広がります。
「上場企業に勤めているという誇りがあったが、非上場になると聞いて将来が少し不安になった」と語る30代の会社員もいれば、「経営がブラックボックス化して、労働条件が悪化しないか心配だ」という声も聞かれます。一方で、地域社会からは「上場維持のための無駄なコストをカットし、その分を地元への投資や賃金に回してほしい」という現実的な期待も寄せられています。
4. 金額・人数・生活負担への影響
上場廃止は、個人投資家の家計や従業員のキャリアに直結します。特にTOBの場合、市場価格に「プレミアム」が乗せられるため、一時的な収益チャンスとなる側面もあります。
【上場廃止に伴う主な数字と影響】
- 上場廃止数: 年間100社超(2025年、過去最多を記録)
- プレミアム価格: 通常の株価に20〜40%程度上乗せして買い取られるケースが多い
- 家計への影響: 継続的な配当収入がなくなる代わりに、まとまった売却益を得られる
- 雇用への影響: 非上場化後、短期的な利益に縛られない大胆な事業再編が行われる可能性がある
5. 行政・自治体・関係機関の対応
証券取引所や金融庁は、この状況を複雑な心境で見守っています。証券市場が十分に機能するためには、魅力的な優良企業が上場していることが不可欠だからです。
一方で、無理に上場を維持させることは企業の国際競争力を削ぐ可能性もあります。そのため、取引所側は上場維持基準の見直しや、非上場化の際の手続きの透明性を確保するためのガイドライン整備を進めています。自治体レベルでは、地元企業の非上場化による雇用への影響を注視し、再編支援などを行う動きも出ています。
6. 専門家の分析(物価・制度・環境・労働など)
中央大学の近廣昌志准教授は、上場企業としての優位性が薄れ始めていると指摘します。特に「狙われやすい企業」には、以下の4つの特徴があると分析されています。
- 株価が利益に対して割安で、時価総額が小さい企業
- オーナー家による支配が強く、意思決定が偏りやすい企業
- 本業で使わない多額の現金(内部留保)を溜め込んでいる企業
- 本業とは別に、含み益のある不動産などを多く所有している企業
これらの企業は、効率的な経営を求めるアクティビスト(物言う株主)にとって格好のターゲットとなります。経営陣は、買収の脅威から逃れ、独自の経営理念を守るために自ら非上場化(MBO)を選ぶという「攻めの撤退」を強いられているのです。
7. SNS・世間の反応(生活者の実感ベース)
SNS上では、投資家と一般市民で反応が大きく分かれています。
- 投資家層: 「保有株がTOBになった!利益確定でボーナス気分」「次はどこの銘柄が狙われるか予想するゲームになっている」
- 就活生・若手社員: 「親は上場企業にこだわるけど、給料が良ければ非上場でも全然アリ」「むしろ非上場の方が長期的な視点で仕事ができそう」
- 一般消費者: 「有名な会社が上場をやめるのは、日本の景気が悪いからなの?」という不安の声
8. 今後の見通し・生活への広がり
今後、この「あえて非上場」という流れはさらに加速するでしょう。2026年以降、中堅規模の優良企業がMBOを選択するケースが常態化すると予測されます。
私たちの生活への影響としては、「就職先の選び方」が大きく変わります。ステータスよりも「実質的な年収」や「経営の透明性」で企業を選ぶ時代が到来しています。また、投資においては「配当狙い」だけでなく、非上場化による「プレミアム売却益」を狙う戦略が、個人の資産形成においても無視できない存在になるはずです。
9. FAQ(読者が抱く疑問)
Q1:上場廃止になると、その会社は潰れてしまうのですか?
A:いいえ。不祥事等による強制廃止でない限り、経営陣が株を買い戻して「非上場企業」として存続するケースがほとんどです。経営自体は健全なことが多いです。
Q2:自分の持ち株が上場廃止になったらどうすればいい?
A:多くの場合、市場価格より高い価格で買い取ってくれる「TOB」が実施されます。指定の期間内に応じるか、市場で売却することで、多くの場合は利益を得られます。
Q3:就職活動で非上場企業を選んでも大丈夫?
A:上場・非上場だけで判断するのは危険です。非上場でも業界シェアが高く、財務が健全な企業はたくさんあります。むしろ、上場維持コストがない分、社員に還元している優良企業も多いです。
Q4:なぜ「物言う株主」は企業を攻撃するのですか?
A:目的は「株価の向上」です。経営に無駄がある企業にメスを入れ、資産を有効活用させることで、株主還元を促します。企業にとっては厳しい存在ですが、市場の健全化に繋がる側面もあります。
10. まとめ(生活者視点の結論)
日本企業が続々と「上場廃止」を選ぶ背景には、これまでの「上場さえすれば安泰」というモデルが限界を迎えている現実があります。
- 企業は「名誉(上場)」よりも「実利と経営の自由」を優先し始めている。
- 投資家は配当だけでなく、非上場化を視野に入れた銘柄選びが重要になる。
- 生活者は「上場=安心」という固定観念を捨て、企業の実態を見る目を持つべき。
「上場廃止」は、変化の激しい時代を生き抜くための戦略的な決断といえます。私たちはこの流れを日本経済の新しい形と捉え、自身の資産形成やキャリア形成に賢く活かしていくべきでしょう。

