- 2026年1〜7月のマッサージ業(整骨院・鍼灸院含む)倒産が68件で過去15年最多
- 倒産の約9割が「販売不振」、9割以上が資本金1,000万円未満の小・零細規模
- 無資格でも開業できる低価格「もみほぐし店」の急増で顧客争奪戦が激化
- 光熱費や人件費の高騰、夜間営業のコスト増が高利益率という業界の強みを圧迫
- 「人手不足」倒産が過去最多の7件発生、施術者の確保と定着が死活問題に
マッサージ業界の倒産が過去最多となった背景
東京商工リサーチの調査によると、2026年1〜7月における「マッサージ業」(あん摩マッサージ指圧師、接骨院、鍼灸院、リラクゼーションサロン等)の倒産件数は68件(前年同期比7.9%増)に達しました。これは同期間としては過去15年間で最多のペースです。
デスクワークの増加やストレス社会を背景に、マッサージやボディケアの需要自体は年々拡大しています。しかし、需要の高まり以上に競合店舗が過剰に増加したことで、1店舗あたりの集客や収益性が著しく低下しているのが実情です。
なぜ小・零細事業者が追い詰められるのか?3つの要因
今回の倒産劇の大きな特徴は、倒産した企業のうち資本金1,000万円未満が94.1%(64件)、負債額1億円未満が95.5%(65件)と、小・零細規模の店舗に被害が激集している点です。
これまでマッサージ業は「自宅や居抜き物件で低資本開業でき、原価率が低いため高利益率」とされてきました。しかし、現在はその強みが打ち消される局面に入っています。
要因1:低価格「もみほぐしチェーン」の台頭と格安競争
民間資格や研修のみで参入できる低価格なリラクゼーション店や大手の参入により、「60分2,000〜3,000円台」といった格安サービスが定着しました。価格競争に巻き込まれた個人経営の施術所は、価格を下げるか集客を諦めるかの厳しい選択を迫られています。
要因2:光熱費・テナント料・深夜営業コストの高騰
店舗を維持するための電気代やエアコン稼働費、テナント賃料が上昇しています。さらに、働く世代を取り込むために夜遅くまで営業時間を延長する店舗が増加していますが、それに伴う照明・空調代や深夜手当が重くのしかかり、収益を圧迫しています。
要因3:深刻化する「人手不足倒産」の急増
2026年1〜7月の「人手不足」を起因とする倒産は7件発生し、前年同期のゼロから急増しました。マッサージ業は施術者の腕や接客力が売上を左右する「人に依存するビジネス」です。資金力に乏しい小規模店は賃金引き上げや福利厚生の拡充が難しく、優秀な人材の離職や採用難から店舗運営が立ち行かなくなるケースが目立ちます。
数字で見るマッサージ業倒産の動向
今回発表された倒産状況のデータをまとめると、倒産に至る厳しい実態が浮き彫りになります。
| 分類項目 | 数値・割合 | 背景とポイント |
|---|---|---|
| 倒産件数 | 68件(前年同期比 7.9%増) | 過去15年間で最多ペースを更新 |
| 主な原因 | 販売不振:88.2%(60件) | 競合激化による客数減少・囲い込み失敗が直結 |
| 資本金規模 | 1,000万円未満:94.1%(64件) | 体力のない個人経営・小規模店舗に集中 |
| 負債額規模 | 1億円未満:95.5%(65件) | 小額負債での破たんが大半を占める |
| 人手不足倒産 | 7件(前年同期:0件) | 採用難や既存スタッフの離職による売上喪失 |
今後の見通しと生き残りのポイント
利用者のニーズは店舗での施術にとどまらず、自宅や施設を訪問する「訪問マッサージ」や、特化型の専門サロン(頭部・足つぼ・姿勢改善など)へ多様化しています。
単なる価格破壊に追従するだけでは経営が立ち行かなくなるため、今後は「国家資格保持による確かな技術」「完全個室や接客による付加価値」「訪問ニーズへの対応」など、明確な差別化を図れるかが淘汰の波を乗り越える鍵となります。
よくある質問(FAQ)
2026年1〜7月のマッサージ業の倒産件数は68件と、過去15年で最多を記録しました。安売り競合の参入、経費高騰、施術者の採用難という「三重苦」が小規模事業者を直接圧迫しています。需要自体は堅調だからこそ、価格以外の独自の強みや接客品質、施術者の定着環境をいかに築けるかが、今後の二極化を分けるポイントになります。
身体の疲れや不調を癒やすマッサージ店は、現代のストレス社会になくてはならない存在です。
しかし、その癒やしを提供する現場では、過酷な価格競争や人手不足によって多くの事業者が苦境に立たされています。
私たちが手軽にサービスを受けられる裏側で、技術や人件費に見合った持続可能な業界環境が守られていくことを願わざるを得ません。